安野谷昌穂「Dream Play Sequence」お披露目会REPORT

BiBiBi&JURULiの店内アート作品を制作した、アーティスト・安野谷昌穂氏、キュレーター丹原健翔氏による新作お披露目会をBiBiBi&JURULiスタッフの藤田瑞月がレポートいたします。

丹原氏が手掛けたムービーをはじめとし、登壇者の皆様によるトークショーが始まりました。

店内アート作品のコンセプト「Dream Play Sequence」をベースに
安野谷氏と丹原氏が制作にあたった、約5か月間がぎゅっとつまったムービー。

彼らが立山登山や、大岩山日石寺で滝行をするなど、富山を身体から感じた様子が伝わりました。

彼らは、富山の土地や文化について知るために、リサイクルショップへ足を運んだそうです。
そこは、人々の生活に寄り添ってきたモノがたくさん眠っている宝庫なのだとか。

写真中央に見えるのは天井のモビール。
安野谷氏がリサイクルショップで入手したモノたちが散りばめられています。

圧倒的な存在感、井波の彫刻が施された”欄間”。
キラキラとした宝石のようなビーズ。
ワイヤーアートは、何かと対話しているようにも見えます。

昔、北前船による貿易が盛んに行われていたことから、アイヌ民族のモノがリサイクルショップにあった、と安野谷氏。
じっと見てみると、アイヌ文化を感じることができるかもしれません。

これはなんだろう?と、皆さんも想像を膨らませ、富山の人々が受け継いできたモノ、生活とともにあったモノを感じてみてください。

四角、三角、丸。
こちらは、ウォールペイントです。
富山の土壌、風景、人など様々な要因からインスピレーションを得て制作にあたった、と安野谷氏。
それらすべてが色や形に表れています。

光に反射しているペイントを見ると、様々な姿形をしたヒト、モノを見つけることができます。
これを見て、私は”立山曼荼羅”がふっと思い浮かびました。
立山信仰や宗教観が顕著に表れているというわけではないのですが、

スペースを広々と使った壮大なペイント、
見れば見るほどに浮かび上がる”何か”、

これらが直感的に曼荼羅に結び付きました。

また、鏡など様々なモノがペイントに装飾されています。
鏡には、何が映し出されているのでしょうか。
皆さんの目に見えたものが何か、教えてくださいね。

よくよく見てみると、メッセージも隠れているようです。

 

最後にご紹介するのは、ラグマットです。

何か違和感にお気づきでしょうか。

ラグは本来、床に敷くもの。
しかしそれが壁にあるのです。

インテリアとアートを融合させたインテリアブランド、PACIFICA COLLECTIVES様と
安野谷氏のコラボにより、約3か月の時を経て仕上がりました。

ペイントではない、このもふりとしたラグマットの立体感も相まって、概念にとらわれることのない自由さがこの空間から伝わります。

緑色のラグは、”人の手”を表しているそうです。

左右、どちらの手でしょうか。
富山の豊かな自然の色、富山の人々の手。
これらが融合した作品のように思えます。

赤色のラグは、ヒトのように見えます。
・・・あれ?なんだか見たことあるような。

そうです、先ほどご紹介した、ウォールペイントにも登場しています。

これらの”ヒト”についてお伺いしたところ、「自分でも気づかなかった!」と安野谷氏。
安野谷氏から見た、富山の人々が描かれています。

情熱、エネルギー、何か熱いモノが全身を駆け巡る。
それは、オーラのように身体からにじみ出るほど熱いということが伝わるような気がします。


ここで、作品のおさらいをしてみましょう。
天井、壁、床。

・・・

上から下へ。

これらの作品は、富山の”広さ”を
レストランの空間を使って表現しています。

安野谷氏は、富山の”広さ”に強く印象を受け、この空間を演出なさったそうです。

富山の綺麗な水を含んだ土、
そこから生まれる空気、
豊かな土壌から育つ作物。

そして
私たちの生活の背景には
常に立山連峰があります。

この空間ともに共存してきた富山の人々に
とって、それらは”あたりまえ”になっていると思います。

その”あたりまえ”はそうでないということに

はっと気づかせてくれる

”あたりまえ”を
改めてかみしめることができる

このレストラン、作品を通して
これらのメッセージを感じていただけたら幸いです。

あの人にとってはこう見えるけど、私にとってはこう見える。

各々の感覚で、感性で、解釈することによって
富山のいろいろな顔が見えてくるかもしれません。

そして

ビビビとジュルリでは
素敵な笑顔のスタッフが、
入口ではカラフルなラグマットが
皆様をお迎えいたします。

皆様のお越しを、心よりお待ちしております。

【Dream Play Sequence】
富山県美術館の南の富岩運河環公園を一望できるt一面の大ガラスのある当レストランでは、 自然光や水面からの反射光が館内を満たす。 安野谷昌穂によるペインティングおよびモビール型の立体作品たちは、 透明感のある光景の中で様々な色や形を取りながら移り変わり、 まるで遊び回る子どもたちや精霊たちを彷彿とさせる。
ガラス工房や鋳造技術といった人々の生活と美意識を支えてきた工芸文化と、 そして日本海と山脈に挟まれて生まれた透明感のある富山の風景が、 夢体験のように遊びを提供し、 複数の時間や空間が重なり合う体験を生むことを期待しています。
キュレーター 丹原健翔

【プロフィール】
■安野谷 昌穂
1991年兵庫県生まれ。 国内外での個展やグループ展に参加。 日本を拠点に活動中。 幼少期から現在に至るまで自然の中で多くの時間を過ごし、その中で得た観察や感覚に強く影響を受けながら、絵画、ドローイング、コラージュ、パフォーマンス、写真などを使った作品を発表する。 コラボレーションワークとしてZUCCa (2015-16 A/W)やCOMME des GARCONS SHIRT (2016-17 A/W)などがある。 2016年にアートブック「STEIDL – WERK No. 23: MASAHO ANOTANI “DEFORMED”」が発表された。
Website : https://masahoanotani.com/

■丹原 健翔
92年東京生まれ。孫正義育英財団の財団生1期生。2017年ハーバード大学美術館公式展覧会(Drawing: Invention of a Modern Medium)企画・研究。作家、キュレーター。アマトリウム株式会社代表。新大久保UGO実行委員、一般社団法人オープンアートコンソーシアム理事。主な展覧会に、森山大道展(19年、kudan house)、未来と芸術展(19年、森美術館、作家として)、過剰な包装(19年、都内某所)、ENCOUNTERS(20年、ANB Tokyo)、You (We) Are Beautiful! (20年、新大久保UGO)など。
UGO https://www.shinokubo-ugo.com/

レポーター BiBiBi&JURULiスタッフ 藤田瑞月